この記事は、緊急対談③[古川勝久 x 李相哲] (2025.3.11)を要約、引用したものです。
<対談ゲスト紹介>
古川 勝久氏
外交安保問題アナリスト
国際政治学者
元国連安保理捜査官
日本を含む対北朝鮮、中国、ロシアの制裁事項に関わるネットワークを調査。
今、特に危ない関西
古川氏によれば、マネーロンダリング(資金洗浄)など、犯罪関与組織が、近年、関西を拠点に活動しているという。
(古川氏は、現在、関西を拠点に捜査中)
例えば、それらは、一見まっとうなビジネスマンのような形で会社を経営している場合もあるようだ。
特にコロナ禍明けから、犯罪組織と中国が連携するような事例が見うけられている。
去年の例では、カンボジアを拠点ににする日本の犯罪集団がオレオレ詐欺で何回か摘発された。その組織の裏にも、中国の犯罪組織の存在が見え隠れする。
今年に入って、カンボジアで摘発された集団が、タイとミャンマーの国境付近に拠点を移動し、国際ロマンス詐欺やオレオレ詐欺を継続しており、そこは巨大な都市となっているという。
日本の報道でも取り上げられたが、これらの拠点の一つは、タイ警察と、ミャンマーの武装組織が一丸となって、摘発に乗り出したところだ。
しかし、ここで危惧されるのは、その活動拠点に日本の犯罪組織の影が見える点である。
古川氏によれば、これは氷山の一角であるという。
偽サイトの氾濫
偽サイトは、女性の丁寧な日本らしい対応を装っているため、サイトの訪問者は騙されやすいのだという。
実際、だまされて、そのサイトで注文すれば、送られてきたのは写真とは違う中国製の粗末な商品であったりといった詐欺である場合が多い。
私の知るところでは、雑貨などのTEMUや衣料品などのSHEINが、それに当たる。
古川氏によれば、サイト運営者は中国人の他、北朝鮮人や日本人も関わっており、サイトそのものは、東南アジアや中国などの国外で作成・運営されているという。
日本人は国内におり、連携しているというが、国境を超えた犯罪集団に対して、特に日本においての取り締まりが弱いことが、野放しになっている一因のようだ。
こういった国際犯罪集団に対しては、国際協力・国際捜査が必要である。
場合によっては日本の警察が、主導しなければならない場合もあるが、日本の警察の弱点として、語学という初歩的な問題が上げられる。
日本の警察組織として、上部であっても、各都道府県からの出向の場合が多く、言語を巧みに操って、国際捜査で他国と渡り合うことのできる人材はほぼいないという。
民間レベルで防御せざるを得ない現状
まず、詐欺サイトにつながりそうなネット環境を見直し、必要であれば遮断する。
ソフトは日々アップデートする。
オンラインバンキングは、最新の銀行アプリ上からスマホ操作する。
近年のハッキングによる不正送金被害の大半はパソコン(Windows OSシステム)からのネットバンキングだという。
古谷氏自身もハッキング被害の経験があり、手口は巧妙で、あとにPCを精査しても、侵入した痕跡を残していなかったという。
こういったハッキングは、2022年から急増しており、自己防衛は必須となっている。
北朝鮮パネル内の抵抗勢力
北朝鮮パネルとは、国連安保理の対北朝鮮制裁に関する専門家チームのことである。
古川氏は2011年から2016年まで、そのチームに在籍した経験を持ち、主に国際事件の捜査を担当していた。
現在も暗躍する犯罪密輸ルート
古川氏によれば、その当時の捜査対象者は、今現在も、各地でいきいきと存続しているのだという。
原因として、制裁はしても組織などを潰すまでには至らない。彼らは、まるでゾンビのように新しい会社を作っては生き延びている。
一例として、2018年、大阪の貨物操業者が主犯格に仕立て上げられた事件があった。
金正恩が乗るベンツを輸出したという容疑であった。
通常、金正恩が乗るベンツは6カ国を経由して北朝鮮に入るという。
ベンツの製造元ドイツへ、イタリアの運送会社が別の会社を経由して発注し(イタリアは北朝鮮のネットワークがある)、オランダのロッテルダム港から、貨物船で中国の大連に密輸するというルートだ。
しかし、当時の大連港は、既に密輸の取り締まりが強化されており、取り締まりの緩かった上海港からの陸揚げを試みた。
そこで、日本経由という名目が登場する。
その時、日本の有名な某北朝鮮団体の関係者に協力を依頼し、断られていたことがわかっている。
そこで、中国の密輸仲介業者は、大阪の小さな貨物運送会社に目をつけたというわけだ。
そこを言いくるめて、中国に対する輸出として請け負わせたという。
しかし、話は、それで終わりではなかった。
2018年に関西を襲った巨大台風によって、一時、大阪港が停止したのだ。
最終的に、密輸船は、大阪港から韓国釜山港を経てロシアへ向かい、そのあと行方がわからなくなった。
わかっているキーパーソンとしてロシアのウラジオストクにいるロシア元評議会議員の存在がある。 その人物は、2010年ごろ、詐欺罪で有罪の判決を受けている。
他に、仲介業者として、中国大連を拠点とする男と、その部下とされる女が浮上した。
その男は、古川氏によれば、かつて北朝鮮制裁事件で調査した男であった。驚くべきことに、今も健在で活動中だという。
当時の韓国釜山には、さまざまな会社が暗躍しており、その事件では、釜山在住のロシア人(あるいはロシア系韓国人)が関与していた。
彼は、ロシアの情報機関FSBの元要員であり、ビジネスマンを装い韓国にいて、ロシア出港を手助けしていた。
翌2019年1月、朝鮮中央通信のテレビで全く同じ様なベンツ密輸が新たに報道され、同じ密輸ネットワークを経由したものと言われている。
いかにこれらの密輸ネットワークが、捜査後も、元気なままで存在しているかという証明であるかのようだ。それらは、今も機能しているという。
文在寅政権が犯した罪とは
このような詳細が明らかになっても、文在寅政権時、対北朝鮮パネルには全く協力をしなかった。
2019年から2020年にかけて、古川氏は捜査の為、韓国を訪れた際の異様な雰囲気を、まるで1980年代の神戸港のようだったと表現した。すなわち、やくざのような普通でない感じの方々が集結しているような埠頭が多くあったという。
前述の問題の釜山の埠頭では、ロシア人が多く屯(たむろ)していたという。
それらの埠頭では、船の修繕が行われていたが、依頼した人物は、あだ名でしか知られておらず、やりとりも現金で行われていた。
この状況が、古川氏に言わせれば、いくらでも密輸ができる土壌であったという。
実際、過去にはベンツ以外にも、石炭の密輸も明らかになっている。
韓国は、ロシアから石炭を輸入していたが、それが実際は北朝鮮産であった。それを分かっていながら、買っていたのは文在寅政権下での電力会社であった。
古川氏によれば、これも、まさにベンツと同じ密輸ルート、同じ密売人組織であったという。
表面上、輸入先は韓国な小さな会社であり、経営者は知らなかったと説明したものの、いざ依頼主の詳細について尋ねると、途端に曖昧模糊な返答を繰り返したという。
この事件について、当時、韓国警察は情報を持っていたにも関わらず、国内はもとより国連にも報告しなかった。
国連の対北朝鮮専門家パネルの中には、韓国外務省から出向した外交官が、北朝鮮専門家と称して送り込まれていたものの、彼らの実態は、専門家パネルの邪魔であったようだ。
当時、韓国がらみの事件は、専門家パネル内でも多く取り上げられはしたが、その捜査がしっかり行われることはなかったという。
その妨害は悪質で、特に文在寅政権下で顕著であったと古川氏は言う。
インタビュアーの李相哲氏によれば、これらの密輸事件に対し、文在寅政権下の韓国国情院が関与していた疑いもあるという。
文在寅政権下の国情院は、韓国の為に情報収集をするのではなく、金正恩の手先のような動きをしていた疑いがある。
問題は、それを国連から罰せられなかったということだ。
古川氏によれば、専門家パネル内の自称韓国人は、あらゆる手立てを講じて、密輸に関係した韓国企業の名前を国連への報告書に載せないよう、働きかけたという。そのエネルギーのあまりの異常さに、中国人やロシア人でさえ、「おまえ、おかしいんじゃない?」と言うほどだった。
企業名が分かれば、銀行の不正送金の実態も分かることから、制裁範囲は広がる可能性を秘めている。
李氏によれば、実際に、韓国内には疑いのある銀行があるという。
つづく、、、