
トランプ大統領が就任後に行った、多くの大統領令に対して、各地でデモが起こっている一方、彼を支持する専門家もいる。
はたして、どちらを信用すれば良いのだろう?
ディープ・ステート陰謀論
*こちらの記事は、以下の書籍の、
第1章「陰謀論に揺れたアメリカ大統領選挙 ー 長迫智子」より
1、2024年アメリカ大統領選挙をめぐる陰謀論(p24-52)
を引用、参考にしたものです。
バイデン政権下でのトランプ氏のイメージ
私の個人的な、トランプ氏の以前のイメージは、
・大統領候補のとき、ロシアのハッカーに支援を受けていたのではないか?
・大統領に落選したとき、最後までそれを認めようとせず、支持者を扇動して、国会議事堂への襲撃を行わせた。
・地球の環境保護には、全く関心がなく、お金こそが全て。スウェーデンの環境活動家の少女と大人げなくやりやった。
・北朝鮮の金正恩との交渉は失敗に終わった。
などであった。私は、大統領選挙では、ハリス氏がなればいいと思っていたので、トランプ大統領が選ばれた時は、「あの襲撃事件はなかったことになったのか?」「アメリカ国民はトランプの方を選んだのだな」という感想が正直なところだった。
なぜトランプを受け入れる人が多いのか?
しかし、就任後の様子をみると、一概に嫌いと片付けるには、複雑なあらゆる情報の渦に私は判断を混乱させられている。
はたして、これまで私の抱いていたイメージは本当に正しかったのか?こちらの方が、何か固定観念に囚われていたのではないか?と。
その最も大きな原因は、終わりの見えないウクライナ・ロシア戦争に対する彼のスタンスと、それを解説する専門家の意見に一理あると感じた為である。
バイデン前大統領下では、ウクライナに武器提供などの支援を行い、ロシアに対する経済制裁等を行う一方、ウクライナ側に防衛以上の攻撃までは容認していないという立場だった。私も、それが最も正しい西側諸国の立ち位置だと信じて疑わなかった。
しかし、経済制裁が、早急に作用しなかったことや、結局、ウクライナが攻撃にまでヒートアップしたことで、?マークがつき始めた。
国連が常任理事国の侵攻に対して何の機能も成し得ない今、これ以上、死者を出さずにロシアに強行を止めさせる方法が見つからなくなっていた。
軍事専門家が当初予想した経済制裁でロシアの武器は半年後には底をつくという予想は大外れで、ロシアが侵攻してから丸3年が過ぎた。
そこで再登場したトランプ大統領候補の発言、「私が大統領なら、1日で終わらせる」に人々が微かな期待を抱かざるを得なかったという言い方が正しいと思う。
「ひょっとしたら、彼だからこそ、それが出来るのかもしれない」
「バイデンは高尚すぎたのだ」
などという考えが現実味を帯びてきたのではないだろうか?
現アメリカ政府が信じている陰謀論とは?
しかし、その一方で、トランプ大統領のアメリカ第一主義の政策が、バイデン時代とは人権意識の面で、180度転換したことや、大統領令の傍若無人さ、イーロン・マスク氏など巨額の富裕層を味方に付けるやり方が、どうしても不安材料として、私の頭に疑問符を投げかける。
それとも、まだ彼は、周囲の対応次第では、天使にも悪魔にもどちらにでも転ぶ不安定を内的に抱えている段階なのか?
これは、イーロン・マスク氏にも共通する心理初学者から見た不安材料でもある。
そんな中、にわかにネットで、バズった単語が、USAIDだった。
YouTubeなどのコメント欄で、やたらと、この単語を物知りげに話題にする人が増え、何のことを言っているのだろうと調べてみると、
USAID(米国連邦政府の独立機関、外交政策として世界各地の経済援助・開発援助・人道援助を行う)の予算と人員の削減をトランプ大統領が発表したことに端を発していた。
ネットでは、その理由が、BBCなど主要メディアに資金が流れており、アメリカ民主党に有利な報道を行っていた、というのだ。
それはBBCに留まらず、日本のNHKや他の世界の人権団体も同様に、お金で平たく言えば買収されていた、という噂だった。
これに関して、BBC NEWS JAPANの記事では、BBCには、そもそも国際慈善団体BBCメディア・アクションという部門があり、外部からの助成金や寄付を資金源としており、USAIDからも当然、資金提供を受けていたに過ぎないといった説明だった。
これが本当であれば、これは賄賂には当たらない。
日本のメディアもUSAIDから資金提供を受けているという噂は、推測するに、オールドメディアを快く思っていない人々の不満の現れと言えるのかも知れない。
この件が示唆していることは、陰謀論とは、誰かの強い不満によって、標的が決まり、同じ不満を持つ人が多いほど、信じられ拡散されるということのような気がする。
トランプ政権に関して、この理論を当てはめれば、彼らが信じている”ディープ・ステート陰謀論”は、トランプ氏が、大統領候補時代に味わった辛酸が根底にあるように思う。
”ディープ・ステート(深層国家)”とは、辞書上の定義では、[政府機関や軍の影響力のあるメンバーで、政府の政策を秘密裏に操作したり、管理したりすることに関与していると信じられている人々の集団]のことだ。
トランプ氏が勝てると思っていた選挙で負けた原因は、そういった裏の大きな力が存在するからだと思ったとしたなら、それは、私の考えでは今のところ外れているように思う。
なぜなら、SDGsといった高尚な次元へ世界的な価値観が到達したのは、文明が成熟したからとも言えるからだ。
よく知られているマズローの欲求5段階説で言えば、バイデン政権が目指していたのは、その一番頂点に位置する「自己実現の欲求」レベルであったのに対し、トランプ氏は、候補時代も現在も、まだ、その一段下の「承認欲求」の段階と言える。