韓国民主主義は孵化できるか

以下の記事は、ウエブニュースから情報を得ています。

最近、韓国の時期大統領候補として、イ・ジェミョン氏の名前をよくニュースで目にするけど、一方では、多くの裁判を抱えていると聞きます。

実際、どのような容疑なのでしょうか?

時期大統領有力候補の1審判決

 2024年11月15日、ソウル中央地裁は、韓国の進歩(革新)系最大野党、共に民主党代表のイ・ジェミョン氏に対し、公職選挙法違反の罪で、懲役1年執行猶予2年の有罪判決を言い渡した(求刑懲役2年)。

 判決によれば、イ氏は、共に民主党公認の大統領候補だった2021年、10億ドルの不動産開発疑惑に関し、虚偽の発言をしたことが、”有権者の正しい選択を妨げた”と判断された。

(時を同じくして、前日の11月14日、イ氏の妻も、公職選挙法違反の罪で水原地裁にて罰金150万ウォン(約17万円)の有罪判決を受けた。)

 イ氏は、城南(ソンナム)市長、京畿道知事を経て、当時の文在寅政権の与党、共に民主党から大統領候補となった。
 イ氏の容疑は、その2022年までの大統領選挙期間中、城南市の土地開発に絡む不正事件を巡るものだ。
 イ氏は1審判決後、すぐに控訴。
 しかし、控訴審公判に於いても検察は「嘘で有権者の選択を歪曲した。地位の上下を問わず厳重な処罰が必要」として、1審同様に懲役2年を求刑した。

 仮に、高裁2審で同様に有罪が確定すれば、イ代表は国会議員職の喪失はもちろん、今後10年、被選挙権が剥奪される。
 これは、時期大統領選への出馬はおろか、その次の大統領選への出馬もできないことを意味する(大統領任期は現在5年で、次期選挙は2027年予定)。

日本でも既視感ある不正疑惑の結末

 イ代表は、現在、11の重大容疑で4つの裁判を抱えている。
 1審有罪の件は、この4つのうちの1つだ。

 では、その10億ドル不動産開発疑惑とは、具体的にどのような事件だったのだろうか。
 イ氏は、この件で2つの嘘をついたとされている。

 イ氏の疑惑が発覚したのは、大統領選挙直前だった。
 「一生最大の業績」と自ら豪語していた城南市の大庄洞(テジャンドン)都市開発プロジェクトが、実は「火天大有(ファチョンデユ)」という新興開発業者と城南市との数百億ウォン規模の不正と暴露されたのだ。

 焦ったイ氏は、「自分も騙された」と主張。
 全ての責任を城南都市開発公社の柳東奎(ユ・ドンギュ)本部長をはじめとするプロジェクトの実務陣に転嫁した。

 その結果、城南都市開発公社のキム・ムンギ第1処長が自殺。
 キム氏の遺族は、彼が当時の城南市長(イ氏)の海外出張に同行したことを契機として、大庄洞プロジェクトに参加し、プロジェクトの最高責任者はイ氏であったと証言している。

 この証言を受け、イ氏は「キム・ムンギ氏は、知らない人」と何度も否定したが、二人が一緒に撮った写真や動画がネット上で拡散され、ゴルフを共にしていたことが明白となった。

阿修羅の様な成り上がり

 検察は、一連のイ氏の言動に対し、「虚偽事実を繰り返し流布し、選挙の民意を歪曲した」として起訴し、1審で有罪が確定したことは、前述のとおりだ。
 イ氏に反省は見られず、最終的に、この事件で大法院(最高裁)まで争うと見られている。

 この間、2022年9月在宅起訴から1審判決まで2年以上が費やされている。
 それは、イ氏がありとあらゆる裁判引き伸ばし工作を行ってきたからに他ならない。
 彼のウォッチャーの間では、それらの小細工が、批判と憤怒をより一層、増長させてきた。
 「日本であれば、おそらく2審で執行猶予が付かないレベル」と、二枚舌に呆れる学者もいる。

 他の容疑では、訪朝費用を韓国企業に肩代わりさせ、北朝鮮に不正送金させた罪でも起訴されている。

 これらの有罪判決から逃れようとする執念は、ユン大統領を、力づくの方法で刑事拘束した経緯を目撃した多くの国民には、ただただ、凄まじいものとして、写っている。

 イ氏が、現政府前まで被差別視されていた、光州(クァンジュ)事件のイメージとしてある全羅道(チョルラド)出身であることを考慮しても、日本人には、なかなか理解し難い人物である。

 「タクシードライバー 約束は海を超えて」という韓国映画がある。
 史実を元にしたとされるその映画では、光州事件での若者たちは善人、軍事独裁政権への勇敢な抗議者たちとして描かれていた。
 政府の流血を伴う容赦のない武力鎮圧は、当時の政権下、しばらく隠蔽され、国際社会がその惨状を知ることが遅れた。
 映画の中で、国際社会が事実を知るきっかけとなったのが、ドイツ人ジャーナリストであり、移動を協力した名も無きタクシードライバーであり、新聞記事を印刷した場所が既に民主主義が社会に根付いていた1980年の日本だった。

 2024年、アジア人女性として初めてノーベル文学賞を受賞した韓 江(ハン・ガン)氏の作品にも、光州事件を素材にした「少年が来る」があり、27ヶ国語に翻訳出版されている(こちらの作品を筆者は、まだ読んでいない)。

 それらの光州事件の青年たちのイメージが、美しいだけに、ネット上の日本人の間では、「皮肉なものだな」と複雑な思いで彼ら残党分子を捉えている。

ユン大統領の真意とは

 ユン大統領の窮地を見るに、多くの支持者が、なぜ、就任時に検事の経験を生かし、反対勢力を一掃しておかなかったのだ、との批判があったと聞く。

 ユン大統領はもともと、朴槿恵政権時、その不正部分を立証した一検察官に過ぎなかった。
 しかし、結果として朴槿恵元大統領を罷免に追い込んだ立役者として祭り上げられ、当時の文在寅から検事総長に大抜擢されたのち、左派陣営から大統領候補として擁立され当選した。

 大統領就任後の彼の価値観は、いたって検察官のままで、不正を見抜けば左派陣営であろうと、容赦なく検挙に追い込んだという。
 そんな彼が、それでも文在寅氏や李在明氏に対しては、不正に目をつむったのは義理だったのだろうか?

 仮に、多少なりとも、彼らに猶予を与え様子見することにしたのだとしたら、全羅道という地域への配慮が、少なからずあったのではないかと私は推測する。
 また、”歴代大統領の悲惨な顛末”という韓国の悪しき習慣(ジンクス)に、終止符を打ちたかったのだと見る人もいる。

 しかし、それらの様子見は、甘い考えに他ならなかった。
 彼ら、反社会組織出身の流れを汲む者たちの、復讐心という囚われの心は、修復するには、1980年の純粋さを跡形もなく、残してはいなかった。 

 ユン大統領は、勾留中に談話として、右派議員を通じて「大統領として執務していた時より、より多くのことを考えた。」と語っている。
 もしかしたら、当初は幻想だったかも知れないユン大統領への国民の期待、民主主義の救世主としての買い被りが、修行の様な拘置所で、支持者たちが待ち望んでいた姿へと変身を遂げたのだとしたら、どうだろう?

 今回の一連の騒動が、結果として、歴史に残る韓国民主主義の分岐点、真の法治国家、先進国の一員へと孵化する可能性を大いに予感するのである。

命運を分ける2審判決

 3月25日法曹界は、予定通り明日26日午後2時に、李在明(イ・ジェミョン)代表の公職選挙法上の虚偽事実公表容疑に関する2審判決が言い渡されると伝えた。

 2021年の「共に民主党」大統領候補予備選の過程で、故キム・ムンギ元城南都市開発公社開発1処長を「知らない」と発言したこと、
 京畿道・城南市白ヒョン洞にある韓国食品研究院の敷地用途地域の変更について「国土交通部の脅迫によって行われた」と発言したことが、虚偽の事実に該当するという容疑で起訴された。

 1審の裁判部は、起訴事実を
 「城南市長時代にキム・ムンギを知らなかった」
 「キム・ムンギとゴルフをしていない」
 「京畿道知事になり、公職選挙法で起訴された後にキム・ムンギを知ることになった」
という3つに分け、このうちゴルフに関する発言だけを有罪と判断した。

 2審では、李在明代表が放送番組で行った4つの発言が、3つの起訴事実のどれに該当するのかを明確にするよう、検察に起訴状の変更を求めた。
 これは、起訴事実を特定し、それが虚偽事実に該当するかどうかを明確に審理するという趣旨だ。

 1審の裁判部は、白ヒョン洞関連の発言について”李代表が自発的に用途地域を変更した”として有罪と判断。
 2審では、国土交通部の「脅迫」があったのかに加え、国会証言・鑑定法に基づき、国政監査での発言が処罰の対象となるかどうかも審理の対象となる見通しだ。

 1審は2024年11月、李在明代表に懲役1年、執行猶予2年を言い渡した。
 減刑された場合でも、罰金100万ウォン(約10万円)以上が確定すれば議員職を失い、今後5年間、選挙に出馬できない。

『韓国次期大統領の最有力候補だが、出馬すらできない可能性も、、、「共に民主党」李在明代表、運命の2審判決迫る』
サーチコリアニュース(2025 3.25)
記事提供:時事ジャーナル

 尚、一部情報によれば、2審裁判官は左派寄りだという。
 判決が、どのようなものとなるのか、韓国民のみならず、日本の国民も、そしておそらく米国政府も、その重要局面を見逃すまいと待っている。

引用・参考記事
「ノーベル文学賞に輝いた韓江さん」KBS WORLD Japanese(2024 10.21)
「韓国野党の李在明代表に有罪判決、大統領選で虚偽発言、次期大統領選の行方も左右」産経新聞,桜井紀雄(2024 11.15)
「韓国「次期大統領候補」筆頭に公選法違反で有罪判決、炸裂した李在明氏の司法リスク」JB press, 李正宣(2024 11.20)
「韓国最大野党代表・李在明氏、3月26日に高裁判決 有罪なら次期大統領選ピンチ、尹氏弾劾を主導したけれど」東京新聞(2025 2.26)

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